第五十八段 長岡

むかし、心つきて色好みなる男*1、長岡といふ所に家つくりてをりけり*2。そこのとなりなりける宮ばらに、こともなき女どもの*3、ゐなかりなりければ*4、田刈らむとて、この男のあるを見て*5、「いみじの好き者のしわざや」とて*6、集まりて入り来ければ*7、この男、逃げて奥に隠れにければ*8、女*9

荒れにけり*10あはれいく世の宿なれや*11住みけむ人のおとづれもせぬ*12

と言ひて、この宮*13に集り来ゐてありければ*14、この男*15

葎生ひて*16荒れたる宿のうれたきは*17かりにも*18鬼のすだくなりけり*19

とてなむいだしたりける*20。この女ども*21、「穂ひろはむ*22」と言ひければ*23

うちわびて落穂ひろふと聞かませば*24われも田づらに行かましものを*25

*1:趣味を解する色好みの男が

*2:家を作って住んでいた

*3:そこの隣だった宮様たちに(仕えていた)文句なくべっぴんの女たちが

*4:田舎だったので

*5:この男が田を刈ろうとしているのを見て

*6:「めっちゃ風流な人のすることだわぁ!」つって

*7:大勢で(男の家に)入って来たので

*8:逃げて奥に隠れてしまったので

*9:女は(次の歌を詠んだ)

*10:荒れちゃってますねーw

*11:マジ何代に渡って人が住んだ家なんだってゆーw

*12:(ここに)住んでたであろう人は(今では)訪れても来ないしw

*13:(男の家)

*14:男の家に大勢で入って来て居座ってたので

*15:この男は

*16:雑草(第三段 http://bit.ly/cOPGcc 参照)が生えて

*17:荒れたこの家で何がイヤだってそれゃ

*18:例えばこうやって

*19:鬼が集まってやかましいことです

*20:と詠んで(奥から)差し出した

*21:この女たちは(やり込められたので)

*22:穂を拾いましょう(←さっき男が刈り取りしてるのを見てた)

*23:と言ったので

*24:(あんたがたが)困り果てて落穂を拾う、っていう話だったら

*25:俺も田んぼに出かけたんですがね…(遊びの相手ならごめんです…)