第五十四段 夢路の露

むかし、男、つれなかりける女に言ひやりける*1

行きやらぬ*2夢路*3をたのむ袂*4には天つ空なる露や置くらむ*5

*1:冷淡だった女に(次の歌を)詠み送った

*2:行き着くことのない

*3:(現実では逢えないので)夢の中で(彼女に)逢いに行く通い路

*4:たもと、着物の袖んとこ

*5:行き着くことのない夢の通い路をたどる俺の袂には、天空の露が置いてゆくのだろうか(びっしょりと濡れているんだぜ…)