第四十六段 目離るとも
むかし、男、いとうるはしき友ありけり*1。かた時さらずあひ思ひけるを*2、人の国へ行きけるを*3、いとあはれと思ひて別れにけり*4。月日経て、おこせたる文に*5、「あさましく、対面せで、月日の経にけること*6。忘れやし給ひにけむと*7、いたく思ひわびてなむはべる*8。世の中の人の心は、目離るれば忘れぬべきものにこそあめれ*9」と言へりければ、よみてやる*10、
*1:とっても仲の良い友人がいた
*2:片時も離れることなく親しくしていたけれど
*3:地方へ行ったのを(「人の国」→第十段脚注27参照 http://bit.ly/9dsRFT)
*4:めっちゃ悲しいと思いながらも別れた
*5:月日が経って、(その友人が)寄越した手紙に
*6:びっくりしたんだけどさ、顔を合わせないで月日が経っちゃったことが。
*7:(俺の事)忘れちゃったんじゃないかって
*8:すごくつらく思ってるよ
*9:世間の人間の心って、会わないでいると忘れてしまうものなんでしょう…
*10:と言ってきたんで、(次の歌を)詠んでやる
*11:(あなたと)会ってないとも思って無いし、
*12:(あなたを)忘れられる時もまた、俺には無いから
*13:(あなたの姿は今でも)ありありと俺の目の前にありますよ。