第四十二段 いでて来し

むかし、男、色好みと知る知る*1、女をあひ言へりけり*2。されど、にくくはた*3あらざりけり*4。しばしば行きけれど*5、なほいとうしろめたく*6、さりとて、行かではたえあるまじかりけり*7。なほはたえあらざりける仲なりければ*8、二日三日ばかりさはることありて、え行かで*9、かくなむ*10

いでて来しあとだにいまだかはらじを*11誰が通ひ路と今はなるらむ*12

ものうたがはしさ*13によめるなりけり*14

*1:ヤリマンだと知りつつも

*2:女と逢うようになった

*3:「はた」は強調

*4:でも(男は)(女を)憎いと思ってはいなかった

*5:ちょいちょい(女の家へ)通ったんだけど

*6:やっぱりめっちゃ不安で

*7:かといって、(女のところへ)行かないでいることなんてとてもじゃないが出来そうになかった

*8:(女を)放って置けなさそうな仲だったから

*9:二、三日支障があって行けなくて(その時に)

*10:このように(歌を詠み送った)

*11:(俺が)(あなたの家から)出てきた足跡もまだ変わらず残ってるだろう、なのに

*12:今は誰の通い路となってるんだろう…

*13:嫉妬

*14:嫉妬の気持ちから詠んだ歌だったんだろう