第三十七段 下紐解くな

むかし、男、色好みなりける女にあへりけり*1。うしろめたくや思ひけむ*2

われならで下紐*3解くな*4あさがほの夕影待たぬ花にはありとも*5

返し*6

ふたりしてむすびし紐をひとりして*7あひ見るまでは解かじとぞ思ふ*8

*1:好きモノの女と逢った

*2:(そういう女だったから)(男は)不安になったのか(次の歌を詠み送った)

*3:腰紐

*4:俺以外に下紐を解くな

*5:朝顔のように夕影を待たない花(のように移ろいやすい心のあなた)だけどさ…

*6:(女は次の歌を)返して

*7:(あなたと)ふたりで結んだ紐をあたしひとりで

*8:(あなたと)逢うまでは解かないって決めてんの!