第三十四段 言へばえに

むかし、男、つれなかりける人のもとに*1

言へばえに*2言はねば胸にさわがれて*3心ひとつに歎くころかな*4

おもなくて*5言へるなるべし*6

*1:つれなくされた人のもとに(次の歌を詠み送った)

*2:(この悲しみを)言い表そうとしてもできないし

*3:(だからっつって、)言わなけゃ言わないでソイツが胸で騒ぎやがるから

*4:自分の心の中だけで歎(なげ)いてるこの頃だよ…

*5:恥も外聞もなく

*6:詠んだ歌なんだろうねー