第三十一段 よしや草葉よ

むかし、宮のうちにて*1、ある御達の局*2の前を渡りけるに*3、なにのあたにか思ひけむ*4、「よしや*5、草葉よ*6。ならむさが*7見む*8」と言ふ。男、

罪もなき人をうけへば*9忘れ草おのが上にぞ生ふ*10と言ふなる*11 (*12

と言ふを、ねたむ女もありけり*13

*1:宮中で

*2:ご婦人の部屋

*3:通ったら

*4:なんか悪い奴だと思ったのか

*5:よっしゃ

*6:(あなたの)忘れ草よ

*7:こっからどうなるものか

*8:見届けますよ

*9:罪もない人を呪うと

*10:忘れ草は自分の上に生える

*11:と言われてますがね…

*12:忘れ草が「生ふ(生える)」と、呪いを「負う」をかけてる

*13:やられたwと思う女もいたとさ