第十九段 天雲の

むかし、男、宮仕へしける女の方に*1、御達*2なりける人をあひ知りたりける*3、ほどもなく離れにけり*4。同じ所なれば*5、女の目には見ゆるものから*6、男は、あるものかとも思ひたらず*7。女*8

天雲の*9よそにも人のなりゆくか*10さすがに目には見ゆるものから*11

とよめりければ*12、男、返し、

天雲のよそにのみして経ることは*13わがゐる山の風*14はやみなり*15*16

とよめりけるは*17、また男ある人となむいひける*18

*1:宮仕えしてた女の所で

*2:ごたち、ご婦人、http://bit.ly/ag9oZj

*3:御達だった人とお知り合いだった(いろんな意味でw)が

*4:ほどなくして疎遠になった

*5:(でもお互い)同じ所に仕えていたもんで

*6:女の目には(その男が)見えているんだけど

*7:男は(そんな女が)いるのかと思ってもいなかった

*8:(そこで)女は(次の歌を詠んだ)

*9:天の雲のように

*10:あなたは私から遠い存在になっていく…

*11:さすがに(私の)目には見えてはいるものの…

*12:と詠んだので

*13:天雲があなたから遠く離れてばっかりいるのは

*14:私が落ち着くべき山の風が

*15:激しいからですよ…

*16:天雲→男、わがゐる山→女、風はや→他の男

*17:と詠んだのは

*18:(その女が)ほかに男のいる人だ、っつう話…