2010-08-26 第十八段 くれなゐに むかし、なま*1心ある*2女ありけり。男、近うありけり*3。女、歌よむ人なりければ*4、心見むとて*5、菊の花の移ろへるを折りて*6、男のもとへやる*7、 くれなゐににほふは*8いづら*9白雪の*10枝もとををに*11降るかとも見ゆ*12 男、知らずよみによみける*13、 くれなゐににほふがうへの白菊は*14折りける人の袖かとも見ゆ*15 *1:中途半端に *2:教養のある *3:(その女の)近くに住んでいた *4:歌を詠む人だったので *5:歌の技量がどれほどか試してみっか、と思って *6:菊の花の色が変わっちゃってるのを折って *7:送る *8:紅に色づいているのは *9:どこかしら *10:白い雪が *11:枝もたわわに、たわむほどに *12:降り積もってるようにお見受けしますが *13:(女の歌の本意を)知らないフリをして(次の歌を返しに)詠んだ *14:紅に美しく色づいているうえに純白な白菊は *15:(これを)手折った人(あなた)の袖のように見えます