第十四段 姉歯の松

むかし、男、陸奥*1にすずろに*2行きいたりにけり*3。そこなる女*4、京の人はめづらかにやおぼえけむ*5、せちに*6思へる心なむありける*7。さて、かの女*8

なかなかに恋に死なずは*9桑子にぞ*10なるべかりける*11玉の緒ばかり*12 (※C釈→*13

歌さへぞひなび*14たりける*15。さすがにあはれとや思ひけむ*16、行きて寝にけり*17。夜深くいでにければ*18、女、

夜も明けばきつ*19にはめなで*20くたかけの*21まだきに鳴きて*22せな*23をやりつる*24 (※C釈→*25

と言へるに*26、男、「京へなむまかる*27」とて*28

栗原のあねは*29の松の*30人ならば*31都のつとに*32いざといはましを*33 (※C釈→*34

と言へりければ*35、よろこぼひて*36、「思ひけらし*37」とぞ言ひをりける*38

*1:みちのく

*2:ふらふらと

*3:行っちまったのだった

*4:そこに住んでる女が

*5:京の人はすんばらすぃと思ったのか

*6:切に、一途に

*7:想う気持ちがあったのだ

*8:で、その女が(次の歌を男に送った)

*9:中途半端な恋に死んだりせずに

*10:蚕(かいこ、「夫婦仲が良い」たとえ)に

*11:なったら良かったわ

*12:短いあいだでも

*13:中途半端な恋愛で死ぬんじゃなくて、つかの間の命でも、夫婦仲の良いカイコにでもなったら良かった…

*14:ひなぶ→鄙(ひな)びる

*15:歌までもが田舎くせえのだった

*16:(男は)さすがにいとしいと思ったのか

*17:行って寝た

*18:(男が)朝まだ暗いうちに出てってしまったんで

*19:水槽

*20:ぶちはめてやんよ

*21:腐鶏の

*22:早い時間に鳴いて

*23:夫なor兄な、女から見て愛しい人

*24:帰してしまった

*25:夜が明けたら水槽にぶちこんでやんよ、ろくでなしのドグサレ鶏めが!早い時間に鳴いて愛しいあのお方を帰らせてしまいやがってえええ!!!!

*26:と、(めっちゃ感情のこもった歌を)詠んだにもかかわらず

*27:「京へ行って来ます。」

*28:と言って(次の別れの歌を詠んだ)

*29:宮城県栗原市金成姉歯(→〒989-5172でググってみよう!)

*30:の松が

*31:人であるならば

*32:都へのみやげに

*33:「じゃ、一緒に」と言うところなのだが

*34:栗原の姉歯の松が人であれば(あなたが人並みの女性ならば)、都へのみやげに「じゃ、一緒に行こっか!」ってなるんだけど^^;

*35:言ったところが

*36:(その女は)めっちゃ喜んじゃって

*37:(あのヒトあたしを)想ってくれたらしいよ!!

*38:と言っていたのだった