第十二段 武蔵野

むかし、男ありけり。人のむすめを盗みて、武蔵野へ率て行くほどに*1、盗人なりければ*2、国の守*3にからめられにけり*4*5女をば草むらの中に置きて、逃げにけり*6。道来る人*7、「この野は盗人あなり*8」とて*9、火つけむとす*10。女、わびて*11

武蔵野は今日はな焼きそ*12若草の*13つまもこもれりわれもこもれり (※C釈→*14

とよみけるを聞きて*15、女をばとりて*16、ともに率ていにけり*17

*1:連れて行くうちに

*2:(人の娘を盗んだ)盗人だっつうことで

*3:役人

*4:タイーホされた

*5:(ここから逮捕劇の詳細→)

*6:女を草むらの中に置いて逃げた

*7:(男を追って)道を来る人が

*8:「この野に盗人がいる」→「犯人はこの中にいる!(キリッ」

*9:つって

*10:火ぃつけようとした

*11:困りまくって

*12:今日は焼かないで下さい(「な〜そ」→「〜しないで下さい」)

*13:「つま(夫or妻)」にかかる枕詞

*14:武蔵野は、今日は焼かんといて^^;、愛する夫もわたしもひそんでるんですから

*15:と詠んだのを聞いて

*16:女を捕まえて

*17:(男と)一緒に連行した