第十段 たのむの雁

むかし、男、武蔵の国までまどひありきけり*1。さて*2、その国にある女を*3よばひけり*4。父はこと人*5にあはせむと言ひけるを*6、母なむ、あてなる人*7に心つけたりける*8。父はなほ人にて*9、母なむ藤原なりける*10。さてなむ*11、あてなる人にと思ひける*12。このむこがね*13によみておこせたりける*14。住む所なむ、入間の郡、みよし野の里*15なりける*16

みよし野のたのむの*17*18もひたぶるに*19君が方にぞ寄ると鳴くなる*20 (※C釈→*21

むこがね*22、返し*23

わが方に寄ると鳴くなるみよし野のたのむの雁をいつか忘れむ*24 (※C釈→*25

となむ*26。人の国*27にても、なほ*28かかること*29なむやまざりける*30

*1:うろうろと出かけてった

*2:そんでもって

*3:その国にいる女に

*4:アタックした

*5:異なる人、べつの人

*6:(その女の)父親は「別の人に娶わせようよ」と言ったけど

*7:血筋の高い人

*8:母親が、「イイトコのヒト」にこだわった

*9:父親はなほ人(身分の低い人)で

*10:母親は藤原氏の出だった

*11:そういうわけで

*12:(ウチの娘は)「イイトコのヒト」に…と思ったのだ

*13:婿(むこ)にしようと決めた人

*14:(歌を)詠んで寄越した

*15:(たぶんココらへん→ http://bit.ly/aFh52w

*16:(彼らの)住所は入間の郡、みよし野の里だった

*17:田の面(も)に降り立った(「頼む」とかけてる)

*18:かり(っていう鳥)、http://bit.ly/brdS6Q

*19:ひたっっすら

*20:あなたの方へ寄るー、って鳴いてるようです

*21:みよし野の、あなたを頼りにしているウチの娘も、あなたに想いを寄せているのよー、と、な(鳴or泣)いているようです

*22:婿にしようとされている男

*23:返歌

*24:いつ忘れることがありましょうか

*25:僕の方に想いを寄せていると鳴く「みよし野のたのむの雁(田の面の雁or頼りにしている娘さん)」を、僕がいつ忘れることがありましょうか?

*26:と(詠んだ)

*27:(京を離れた)よその地方

*28:やっぱし

*29:このようなこと(→女にアタックしたりしてること)

*30:やまなかった